(2)「カリキュラムの質」を高めるために
@「全国学力調査」の全面活用と「学習指導要領全面改訂」の早期取り組みを
(ア)OECD(経済協力開発機構)が2000年以降3年ごとに行っているPISA(15歳時の学力世界一の座をフィンランドに譲り、大きな衝撃が日本国内に走った。「ゆとり教育」を是正し、「たしかな学力」を目指し、「全国学力調査」が実施され、「学習指導要領」が全面的に改訂されるのが国の政策と考えられる。各市・各町の教育委員は、この国の動きをどのように考え、対処すべきかが「カリキュラムの質」を考える上で避けて通れず、「これからの公教育を考える」上で重要。
(イ)では、「全国学力調査」の実施や「学習指導要領」の全面改訂にまで影響を及ぼしているOECDのPISA調査が目指している「国際標準の学力」とは何か。
1)PISA調査は、読解力(reading)、数学、科学や問題解決領域での生徒の知識と技能を比較するところから始まった。選択される学校教科における生徒の達成度評価から、人生における生徒の成功はいっそう広い範囲のコンピテンシーに左右されるということがわかってきた。OECDは、De Se Coプロジェクト(通称、デセコ)を組み5年間にわたってコンピテンシーとは何かを調査、研究。2003年に「キー・コンピテンシー」の定義が刊行された。日本でも、ようやく2006年にその翻訳が出版され、注目を集めるようになった。(「キー・コンピテンシー・国際標準の学力をめざして」明石書店2006年5月31日発行)
2)参考までに、日本の「全国学力調査」や「学習指導要領」に多大の影響を与えた、OECDのPISA(15歳時学力到達度調査)のバック・ボーンとなる「キー・コンピテンシー」(鍵のように重要な能力:林訳)とは何かを御紹介する。コンピテンシーには3つのカテゴリーがある。
(a)相互作用的に道具を用いる(能力)
(b)異質な集団で交流する(能力)
(c)自律的に活動する(能力)
*教育委員は、自らの社会的責任を全うするために、是非この本を買い求め、できるだけていねいに読みすすめることをお勧めする。OECDをはじめ、世界の国々の教育政策を立案する人々は、国際標準の学力とは何かを考えた上で、PISA調査での結果向上を目指しているからである。
 市や町の教育政策、とりわけ「カリキュラム」の「独自性」を考える上で、避けて通れないのが「キー・コンピテンシー」の考え。
*但し、現実は、この「キー・コンピテンシー」の考えは、ほとんど知れ渡っていない。ことばとしては知っているが、この「本」を読んだことのない教育委員や教育委員会事務局員がほとんど。各市や町の「カリキュラムの質」を一気に国際水準にまでもっていくには、教育委員会をあげて、この「本」を読み込み、参考にしながら、市や町の独自の「カリキュラム」を考えることを提言する。
*正式の「教科」以外の「かくれたカリキュラム」(学校行事、部活動、清掃など教科以外の学校での生活)もこの「キー・コンピテンシー」の概念を活用すると、より深化すると確信、児童・生徒の将来に帰与すると確信する。
*ちなみに、OECDから出ている分析レポートは、日本からの優秀な出行者・協力者も多いせいか、日本の教育政策に多くの影響を与えている。(私の感想では、日本の教育政策の大半は、OECDの分析レポートの中に何年か前に書き記されている。)

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