丸の内北口通信(8) 2007年10月31日
 
 
大学の生き残り策を考える
−岡本薫著「18歳人口急減期のOECD諸国の経験」から−
 
 
林 明夫
 
Q 岡本薫・政策研究大学院教授によれば、OECD(経済開発協力機構)が1981年秋にパリで開催した「高等教育政府間会議」では、「18歳人口の急激な減少(decline)対策」がもう既に議論されていたようですね。
A (林明夫 以下省略)はい。岡本先生によれば、この会議を通じて各国の共通理解となった18歳人口急減対策は、後から考えれば極めて単純明快なもので、次のようにまとめられる。
 @従来どおりの学生数を維持したいなら、18歳人口急減に伴って当然に生じる新入生の学力低下に対応するため、各大学が補習(remedial program)を実施しなさい。−アメリカ型−
 A新入生の学力を従来どおりの水準に維持したいなら、18歳人口の減少率に応じて、各大学の入学定員を削減しなさい。−西欧型−
 Bただし、西欧諸国の大学は、新入生の学力を維持するために入学定員を削減していくと、学科によっては「学生定員1名」といった状況になってファカルティの維持が困難になるという問題に直面。
 そこで、「大学の質」を重視した「高等教育政府間会議」が提唱した対策は、質の低下をもたらす自国学生の全入ではなく、質の高い「新しい顧客(New Client)」の開拓ということであった。具体的には2種類の「新しい顧客」が注目されたが、その第一が「社会人」であり、第二が「留学生」である。
 
Q 興味深い分析ですね。
A 私もそのどおりだと思います。現実直視のアメリカは、18歳人口が減少しているのに、大学の入学定員を従前のまま維持すれば大学生の学力は低下することを率直に認め、低下し続ける学力不足を補うための補習教育、つまりremedial programを充実してきました。
 アメリカで発展しているコミュニティ・カレッジ(community college)などは、remedial programとの真正面からの取り組みと私には思えます。
 
Q 日本でも、高校時代にほとんど勉強しなかった学力不足の生徒を、定員が不足していることを理由にどんどん入学させてしまうOA入試がさかんであるにもかかわらず、補習教育(remedial program)に手が付いていない大学がまだ存在するようですね。
A 大学経営上、定員を充足するために学力不足の学生を入学させている大学の経営者は、学力不足を補うための補習教育(remedial program)を全学を挙げて行う大学としての社会的責任(CSR)があると私は考えます。

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